ヒートショックとは
2025.12.08
ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧や脈拍が大きく変動し、心臓や脳に負担をかけることで起こります。人間の体は、外気温に応じて血管を収縮・拡張させ、体温を一定に保っています。
冬場の入浴時、暖かい居室から寒い脱衣所や浴室へ移動し、さらに熱い湯船に浸かるなど、血圧が急上昇・急下降することが原因で発生する健康被害です。場合によっては、心筋梗塞、不整脈、脳卒中(脳梗塞・脳出血)などの重篤な疾患を引き起こす可能性もあり、重症の場合、意識障害や溺水に至ることもあります。厚生労働省人口動態統計(令和3年)によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は四七五〇人で、交通事故死亡者数二一五〇人のおよそ2倍です。
暖房の効いていないトイレや廊下も危険です。冬の夜中にトイレへ行った際、急に寒い場所に移動して血圧が急上昇し、脳卒中を起こすケースもあります。冬場の浴室やトイレでの突然死での多くが実は、このヒートショックによるものと考えられています。
一般的に高血圧や動脈硬化、糖尿病などをお持ちの方は危険性が高くなるといわれていますが、健康な高齢者の方も注意が必要です。加齢により血管の柔軟性が低下し、温度変化に対する血圧調整機能が弱くなるとともに、感覚が鈍くなりやすく、熱い湯に長時間浸かってしまう傾向があるからです。
ヒートショックの症状
ヒートショックの初期症状には、動悸、立ちくらみ、めまいなどがあります。重症化すると、失神、意識障害、麻痺、ろれつが回らないといった神経症状が現れ、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすこともあります。
特に浴槽内で意識を失った場合、溺水の危険性が高まります。
入浴時のポイント
ヒートショックを防ぐためには、以下のような対策が有効です。
① 脱衣所・浴室を事前に暖める:暖房器具やシャワーの湯気を活用し、お風呂のふたを開けておくなどして、室温差を減らす。
② 湯温は41℃以下、入浴時間は10分以内:心臓への負担を軽減する。
③ かけ湯をしてから入浴する:体を湯温に慣らすことで血圧変動を抑える。
④ 浴槽から急に立ち上がらない:めまいや立ちくらみを防ぐ。
⑤ 入浴前後に水分補給をする:脱水を防ぎ、血液の粘度を下げる。
⑥ 体調が悪いときや、食事の直後、飲酒後や薬服用後の入浴は避ける:意識障害や転倒のリスクが高まる。
⑦ 半身浴がおすすめ:特に心不全や脳血管疾患の病気を持つ場合
⑧ 家族による声かけや見守り:独居高齢者には特に重要。
まとめ
ヒートショックは「血圧の乱高下」による全身の循環トラブルですが、入浴時の心がけや対策で防ぐことができます。高齢の方が一人で入浴する際は、家族に声をかける、浴室に呼び出しボタンを設置するなど、安全対策も効果的です。
めまいや立ちくらみ、動悸、胸の圧迫感などを感じたら、すぐに入浴を中止し、休むか、必要に応じて救急要請をしてください。
ヒートショックは「寒さ」と「油断」から起こります。これから寒さが厳しくなる季節、暖房の工夫や入浴習慣の見直しは、あなたや家族の命を守る第一歩です。
(Y・H記)




